
今年(2009年)の初夏に映画化され、大人気を博した「幼獣マメシバ」の原作小説がこれ。
上下巻という大作だけど、肩肘はらずに一気に読めてしまう面白小説だ。

何より設定からしてコミック的。35歳のニート中年と生後2カ月のマメシバが突然姿を消した母を捜して旅をするというお話なのだから。
自分の生まれた町はおろか、半径3キロ以上は出たことがないニート中年の二郎がマメシバの一郎を連れて、
生まれて初めて国道を越え、橋を渡り隣町までいく大冒険(?)は、大笑いしながらちょっぴり泣かせてくれる。
映画だと一郎のかわいい姿と二郎のヨボヨボ姿だけでインパクトがあるが、小説はそうもいかないわけで。
二郎のダメっぷりと一郎のキュートさをさまざまなエピソードであぶりだしていくのだ。
ボクとしては、ダメダメ中年の二郎が、一郎への愛情にめざめていくうちに、人間としても成長する…というテーマは買いだと思う。
純粋なわんこのココロに触れることで、ダメダメ人間も一人前のリーダーに成長するのだ。

いたいけで健気な子犬の姿に、理屈っぽくて頑なな30代ニートの心が
しだいにときほぐれていく様子は、わんこを飼ったことのない人でも深く共感できるポイントだろう。
最近は「セラピー犬」など、人の心を癒すわんこのチカラが注目されていたりするけど、癒すだけじゃなくて、“やる気”を起こさせるチカラもあるのかも。

何にせよ、二郎にとってこの旅は、「自分探し」「自立」への旅であったというわけ。登場人物たちも、ヘンテコだけどみんなやさしい。
やたら世話好きでお節介なボランティア女性や、どこまでもポジティブな幼馴染のアシストが作品の良いスパイスになっている。
笑いながらやさしい気持ちになれる“大人のメルヘン”って感じだ。