
今回の“ほっこりする作品”というテーマにこれほどピッタリの漫画はないかもしれない。内田かずひろの「ロダンのココロ」シリーズだ。

朝日新聞に連載されていたので読まれていた方も多いだろうが、これがなんとも不思議な味わいの漫画なのだ。
連載漫画は4コマが普通なのにこれは8コマ。起承転結といった漫画のセオリーもない。これといって事件も起きない。
人間社会の日々の営みを観察するロダンという名の、ラブラドールリトリバー犬のボヤキが続くだけなのだ。
漫画のタッチもどこか懐かしい昭和の風情で、最初はちょっと退屈に思うかもしれない。“どこが面白いの、これ”。
ちょっと待ってほしい。ここで投げ出しては、この漫画のふか~い味わいの芸を楽しめずに終わってしまいますぞ。
そう、やがてこのロダンのボヤキは、“普通に暮らす普通の人々の普通の心情”を代弁してくれていることに気づく。
人と違うこと、個性的であることが価値とされる今の時代、普通の人々が感じる普通の心情なんて、誰も気にもとめない。
ロダンのボヤキはそんな現代にこそ、「普通の生きる」意味や楽しさを教えてくれるのだ。

あるとき、ひとりで留守をしているロダン。知らない人が道を通り過ぎるのをみて、ふと不安になる。“ワシはどこにいるんだろう?”そこに大好きな家族が帰ってくるのを発見。ロダンはここで安堵のため息をもらし、“いや、ワシはここにいる”と安心する。
ただこれだけのストーリー。でも、今だかつてこんなにもシンプルに幸せの本質を表現した漫画があったろうか。ロダンのボヤキ、恐るべし。

作品のすべてがロダンの目で見て、わかる範囲でしか語られないから、実際のロダンの家族の名前もよく分からない。「ダンナ」、「オクさん」、「おじょうさん」の3人家族を中心とした日常生活がロダンの全宇宙だ。
このささやかな暮らしの中に、生の意味を発見するロダンのボヤキ。このボヤキに耳を傾ければ、きっと誰もが“ほっこり”とした幸福感に包まれることだろう。