

あなたは、「チベット」と聞いて何を連想しますか?
ダライ・ラマ14世、ポタラ宮殿、マニ車、輪廻転生、五体投地…。中国の北にある山岳国で独自の仏教を信仰する国、まあ、政治的にも歴史的にも複雑な国で、まだまだ日本人にとっては“神秘の国”である。

そんなチベットに、「ラサ・アプソ」という犬がいる。はるか昔からチベットの修道院で飼われ続け、死んだ僧侶の魂はこの犬の体に入り込むと信じられ、人々に崇拝されてきた神聖な犬だ。この神聖な犬が中国に贈られ、シーズーやぺギニーズの原型になったとされる。見た目はシーズーを少し大きくした感じで、その純粋種はチベットのラサに行かなくては見られないともいわれる。
世界各国、それぞれの土地で、身近な動物を宗教や神話に結びつけてきた歴史があるように、チベットの人々にとってはまさに、このラサ・アプソこそが最も身近で未知の動物だったのだろうか。
チベットが誇るこの神聖な犬が登場するのが、ブラット・ピット主演の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」だ。オーストリアの世界的登山家ハインリヒ・ハラーの伝記を元に、彼が1939年から7年間チベットで暮らした数奇な体験を映画化したもの。

時は第2次大戦勃発後、ブラピ演じるハインリヒらオーストリア登山隊は、ヒマラヤ登山中にイギリス軍の捕虜になってしまう。彼らは何回もの脱走を試みて、ようやくチベットに逃げ込む。食料もなく、衣服もボロボロの服のまま、聖地ラサの街へもぐりこむ。そこに登場するのが聖なる犬、ラサ・アプソだ。あろうことかブラビたちはこの犬のエサを盗もうとして…。
この事件をきっかけに、ハインリヒはチベットの高官と知り合い、やがては若きダライ・ラマ14世の教育係となり、チベットの現代史にその名を刻むことになる。知られざるチベットの文化、宗教、現代史を描いた秀作だ。現実では見ることのできないブラピとダライ・ラマ14世の交流も見どころだが、マスター的には本物のラサ・アプソの姿をしっかり見てほしいと思う。