
小さい頃、「イソップ物語」を母親から読んでもらったり、学校の授業で学んだ経験のある人は少なくないだろう。あの「北風と太陽」や「兎と亀」のお話で名高いイソップだ。

イソップは実在の人物なのかも定かではないのだが、紀元前600年代に活躍したというから、とんでもない昔の人。以後、中世になってからさまざまな写本が出回り、そこでイソップの話として追加されたものもあるが、それらすべての“イソップもの”をまとめたのが、この岩波文庫版「イソップ寓話集」だ。
【寓話】という定義もイソップから生まれたらしく、意図的な作り話であること、道徳的な教訓を目的にしていいること、などとされている。
わずか3行で終わってしまう小話のようなものも含めて、この本ではなんと471話のイソップ話が楽しめる。その中で犬をテーマにしたものが36話。ちなみに犬のライバル(?)である猫はたった4話、ネズミは6話、キツネは31話と意外にも(!?)健闘している。

“犬もの”で有名なところは、「肉を運ぶ犬」。肉をくわえた犬が川に映った自分の姿に、もう一匹肉をくわえた犬がいると思い、襲いかかり、自分の肉まで落としてしまったという話だ。「欲深さ」を戒める教訓だが、ほかの話を読んでも、どうもあまり“良い例”には犬は出てこない。
「腹をすかした犬」では、腹をすかした犬たちが川の中に毛皮が浸かっているのを見つけ、まず川の水を飲んで毛皮にありつこうと相談。みんなで水をたらふく飲んで、腹を破裂させてしまった。これは「儲けに誘われて、望みを達成する前に力尽きる人」を喩えたもの。
それ以外にも、狼に騙されて散々な目にあったり、ウサギに揶揄されたり…。結構ツラい役回りが多いみたいだ。

そもそもこの寓話集には、人間の愚かな考えや行動に対する戒めの類が多い。その、<愚かな者>の立場に犬が置かれていて、ほかの動物によって諭されるという構図がよく見られるのだ。
それだけ犬は擬人化されやすく、人の世を斜めから見て語るイソップ寓話にはピッタリなキャラクターなのかも。絵本のイソップより辛辣で、 “大人”のあなたに、おすすめですよ。