
映画・ドラマの中で主演の名優を食ってしまうほど、名演技を見せた犬たち。それも動物映画・ドラマではなく、あくまでも人間が主役の映画で。今月は、そんな観客に強いインパクトを与えた俳優犬の名演技を通して、幅広い犬の魅力、人にとっての犬の存在の大きさを感じてみよう。

『スナッチ』は、ロンドンのイーストエンドを舞台にして、次から次へと悪人が出てくる痛快ギャング映画。一応、主役は非合法ボクシングのプロモーター、通称ターキッシュとその相棒の2人だが、彼らを窮地に追い込むさまざまなギャングたちが入り乱れて、八百長ボクシング、86カラットのダイヤモンドの争奪戦とハイスピードで物語は展開する。

この“悪の群像劇”で、楽しそうにパイキー(アイルランド系のジプシー集団)のボクサーを演じているのがブラッド・ピットだ。当時、すでにハリウッドの大スターであったブラピがこの低予算のイギリス映画に主演でもなく一悪役として出演している。
ブラピ演じるバイキーは、アイリッシュジプシーの流浪の民で、イギリス人でも何を話しているのか分からないほど、ナマリがひどいという設定。ブラピは実際にアイルランドへ行き、ジプシーとしばらく生活をしてこのナマリを習得した。彼の役者魂がこの映画の見どころのひとつだ。
そして物語の大きな鍵をにぎるのが、バイキーが飼っている犬。トレーラーハウスに住んでいるブラピたちの元へトレーラーを買いに来たターキッシュたちに、無理やりプレゼントとして犬を預ける。しかし、この犬は後でしっかりブラピの元に逃げて帰るという寸法。スタッフォード・ブルテリアという犬だが、濃いキャラの男たちに交じってもいっこうにヘコたれない演技を見せる。
ずんぐりむっくりした体型、体も顔も真っ白で耳と片目パッチの黒、アメリカンコミックに登場するような典型的な容姿。ときにはギャングたちに食い付き、ときにはナデナデされてうっとりしたりする。彼もまた、ブラビに負けずおとらずの“役者魂”で大暴れするのだ。

題名の「スナッチ」とは、“かっぱらう”という意味の俗語。最後の最後においしいところをすべて“スナッチ”しちゃうのは誰か?ブラピもタジタジの悪役犬と共に楽しもう。